今回は、セルゲイ・エイゼンシュテインの4本立て。エイゼンシュテインは 『戦艦ポチョムキン』 以外は未見だったので、この際まとめて観てみようと思ったわけです。『メキシコ万歳』 以外は1920年代のサイレント映画ですが、『ポチョムキン』の印象では映像はうるさい(というか動的)ので寝ない自信はありました(ロシアつながりだと、少し先にアレクサンドル・ソクーロフのオールナイトがありますが、こちらは爆睡する自信があるのでまず行かない)。お客さんは、7割ほど入ってたでしょうか。映画を勉強してる学生風な若者が多かったです。
『戦艦ポチョムキン』は、観るのは5回目位ですがスクリーンでは初めて。上映45分すぎあたりで、立て続けに3回ほどフィルムが切れてしまったのが惜しかったです。とくに3回目は、オデッサの階段でいよいよ大虐殺が始まる直前の「すると突然!」の字幕のところで切れちゃって残念。
『ストライキ』は、ストライキを起こす労働者と資本家側双方の闘い。監督の長編第一作らしいですが、早回し、逆回し、ワイプ、クロスフェードとか色んな技術がテンコ盛り。凝った構図や編集もこの作品で既に見ることが出来ました。一方で、次の 『ポチョムキン』 と比べると大分ユーモアのあるノリだったのが意外。資本家とそのスパイの演技が大仰だったり、それぞれ愉快なあだ名が付けられてたりして愛嬌があって、敵側なのに妙に憎めないんですよ(これと同じ理由で 『忠臣蔵』 でも最後の方になると、そんな大人数でおもしろおじいちゃんを苛めんなや・・・と毎度思う)。ただし、ラストは原っぱで粛清される労働者と、喉を裂かれ屠殺される牛。野原一面に死体が転がる風景のあとに、こちらをにらみ付ける両目のアップが映り 「忘れるな!」の字幕で終了、と強烈。
『十月』は、ロシア革命の顛末。人物の固有名詞がたくさん出てきたり、起こる出来事も多いのでこの辺の歴史に疎いと若干付いていくのがしんどいです。ワンショットの短さやイメージショットの多さは、ますます拍車がかかっており、圧迫感を保ったまま怒涛の勢いで進行する作品でした。木彫り人形やおたふくとか東アジアの工芸品が延々と映るのにはさすがに当惑でしたが。ポチョムキンからの3作は、どれもモブシーンが凄まじかったです。あと、ショスタコーヴィチの音楽は映像ともども高エネルギーで、良くも悪くもやかましいという感想。
『メキシコ万歳』は、エイゼンシュテインが1930年にメキシコで撮影したのちニューヨークに保管されていたフィルムを、当時助監督のグリゴリー・アレクサンドロフが編集して1979年に発表したもので、メキシコの風景と習慣と歴史を現地の住民を起用して描いたドキュメンタリー調の作品。冒頭と終盤にアレクサンドロフ本人が登場し、当時の状況を説明する場面があり。国を変えても独特の画面構成は不変で、エイゼンシュテインがもっと色んな土地の色んな題材を撮ることが出来てたらなあとしみじみ。闘牛の場面での、牛目線カメラはちょっとチープでウケました。
新文芸坐では、いつも休憩時間に上映作品に関係した曲が館内に流れているのですが、今回はなんとペット・ショップ・ボーイズの二人がTennant/Lowe名義で2005年にEMI Classicsから発表した 『戦艦ポチョムキン』 のスコアが使われてました。PSBファンの当方は、曲が聞こえてきた瞬間に内心ウォーッと大反応。ありがとう、新文芸坐。
Tennant/Lowe / Battleship PotemkinこのアルバムはPSBとしてはオリジナルアルバムとしてカウントしている大変な力作。そもそも何故に彼らがこの映画に音楽を付けたかというと、ロンドンのICA( Institute of Contemporary Arts)からの依頼だったらしいです。それに加えてボーカルのニール・テナントさんがロシアの歴史や文化に大変造詣の深い方であること。そして、ゲイであった先達アーティストへのオマージュに事欠かさない彼らですので、エイゼンシュテインにも同様の思いがあったのでは、という理由も考えられます。発表当時は、イギリスとドイツで実演上映会をやってたみたいですが、いまこのスコアでこの映画を見ようとすると、DVDと一緒にCDを流すしかないとか?

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